

「俺の、協力者(パートナー)になって欲しい」
敷地をぐるりと囲うように生い茂った樹木から落ちてくる、幾重にも重なった蝉時雨。
その煩うるさいくらいの音の中でもはっきり聞き取れる、澄んだテノール。
「俺の名は、桐生梓馬(きりゅうあずま)。『夢路(ゆめじ)の導き』という名の組織(ギルド)に所属する狩人(ハンター)で――」
人気声優もかくやという綺麗な声が語るその言の葉は、確かに日本語である事は理解出来るのに、残念ながら何を言っているのかさっぱり理解できない。
唯一、真弓(まゆみ)に理解できたのは、彼の氏名のみ。
「……………………」
黙り込んだまま、胡乱うろんな目を向ける真弓に、その男は淡々と事務的な口調で告げた。
「俺は、現在、梅宮学園高等学校にて発生している事件の調査と、犯人の捕縛の任を受け、組織から派遣された――吸血鬼だ」
第1話「夢路への誘い」冒頭より
