

第37話「初」から。
むかぁし、昔の話さ。まだ俺が、ガキにちっと毛が生えた位の頃の……。その頃の俺はな、好きだった女が吸血鬼なんかを好きになったって知った時、そいつらの気持ちを思いやる事もせず、ただ自分の正義だけを信じて、こいつを殺そうとしたんだ





第56話「狭間の部屋」から。
――前に、人間界と、魔界を含めた異界が、『色の三原色の図みたいなものだ』って説明したけど……、世界と世界の繋がりは、あの図みたいに隣り合い重なっているんじゃない。世界が存在する場所は、全て等しく“ここ”、この同じ場所に存在する。そうだな……、マトリョーシカって、ロシアの人形を知ってる? おんなじ形の、少しずつ大きさの違う人形がどんどん中から出てくる、あれ。あんなふうに、重なって存在しているんだ。





第57話「術式‐描き出される魔法陣‐」から。
魔法陣全体が光をまとった――その瞬間。
魔法陣の円に沿って天井まで届く青白い光の壁が音もなく現れた。





第59話「吸血鬼の口づけ」から。
朔海は、咲月の手首を捕まえて傷口を
自らの口元へと運んだ。
擦ったばかりで熱を持つ傷口を下から上へと
暖かく湿った感触が、何度も執拗になぞり上げる。


